小江戸川越バーチャル散策
~すべてを読み解けば、きっとあなたは導かれる~
シルバー編

シルバー編イラスト

結婚45年目になる秀夫さん、美代子さん夫婦。今日は、ふたりで通っている水彩画教室の仲間からすすめられて小江戸川越へ遊びに行くことに。

住まいのある東京メトロ有楽町線の沿線の駅から電車に乗り、少しうとうとしていると、ほどなく乗り換えをせずに川越駅に着いた。

「さてと、テレビで見る蔵の町並みってどこだろう?」

最近、ガラケーからスマホに買い替えた秀夫さん。駅を忙しく行き交う人々のなかで難しい顔をしてグーグルマップの検索を始めた。

「あなた、そんなとこで突っ立っていたら人の迷惑じゃない。蔵づくりならバスでも行けるって書いてあったわよ。」

すでに前日にはネットで観光情報をチェックしていた美代子さん。いつでも主導権は彼女の手の中にあるのだ。

もたもたしている夫をよそに、さっさと先に東口デッキ下の東武バスに乗り込み、まずは蔵づくりの町並みがある一番街へ向かう。見慣れた駅前の風景から一変して、ここは江戸時代かと思わせるような重厚な建物が立ち並ぶ。

「もし戦争で東京が焼けなかったら、いくらかこういう風景も残っていたのかしら。」

歴史好きで大河ドラマを見ることを欠かさない彼女ならではの視点だ。最近、水彩画教室に通い始めたふたりは、持ってきたそれぞれのスケッチブックに手早く筆を入れ始めた。

週末のせいか道には多くの観光客がおり、片手にビールのカップを持った若者やスマホで自撮りをするグループなど、みな思い思いの休日を楽しんでいた。黄色い風船をもった女の子の母親は犬を連れた地元の人に道を尋ねている。

「あかりやは行ってまっすぐだよ。」
と通りの向こうを指さして説明するおじさん。それを聞いた風船の女の子は熱心にピンクのメモ帳になにやら書き始めた。母親はそれを見て、

「あら、ちゃんとメモしてくれたの。ありがとう。いつのまにか字が上手になったわね。全部ひらがなだけど。」

父親とおぼしき若い男性も嬉しそうだ。そんな光景に子育て時代を懐かしみ、目を細めるふたりであった。

地図をみるシルバーイラスト

時の鐘を眺めて、蔵造り資料館を回り、ふたりは本丸御殿エリアへと向かった。広い青空に整然とした瓦屋根が印象的な市立博物館でまず川越の歴史と文化に触れる。もともと歴女の美代子さんは興味深く資料を見ているが、秀夫さんはすぐに飽きて、「早くとなりの市立美術館に行こうよ」とダダをこね始めた。

隣接する白い壁と和風の外観がそれ自体、アートの雰囲気を醸し出している美術館で、たっぷりと地元ゆかりの芸術家の作品を堪能したふたりは向かいの川越城本丸御殿にも足を向けた。

立派な唐破風屋根の玄関から靴を脱いで上がり、歩くと軋む音がする仄暗い板張りの長い廊下を奥に進む。すると突然、美代子さんが軽い悲鳴をあげ、夫の腕をつかんだ。見ると、和室にお侍さんが3人で座り、何やら談合をしている。

「びっくりしたぁ。なんでいきなり蝋人形が出てくるの?」

当時の家老の様子を再現したものらしいが、たしかに唐突感のある演出だ。すぐ脇には開放的な長い縁側があり、そこに足を投げ出して座り、ゆっくり流れる白い雲を眺めていると隣の高校のグラウンドからクラブ活動の若い声が聞こえる。紡がれてきた時の移ろいを感じさせる場所だ。

喜多院へ向かう途中、マップを見ながら路地をくねくね歩く。お城のまわりだから敵に容易に攻められないように、突き当たりの道が多いなんていう豆知識も、地図を見て歩きながら実感できるのは古い町ならではの楽しみだ。

境内の五百羅漢を見てまわり、木立をすこし抜けると仙波東照宮があった。なんでも家康の亡骸を日光に運ぶ途中にここで法要をしたらしい。どおりで見慣れた「三つ葉葵の御紋」があるわけだ。歴史好きの美代子さんには喜多院の文化財は興味深いものだらけだ。

少し歩き疲れたふたりは駅にもどる商店街で偶然、「甘味処あかりや」を見つけた。蔵づくりのあたりで若いファミリーが道をたずねていたお店だ。

「あんみつに田舎しるこ、なんか懐かしいわね。よく学生の頃、甘味屋さんに通ったわ。あ、わたしクリームソーダ頼もう。」

「おしるこで思い出したけど、そういえばあなた、新婚旅行の時の夜ごはん憶えている?」

「ああ、オートミール事件か。」とばつの悪そうな顔をして秀夫さんが答えた。

「そうそう。夜、通りを歩いていたら店がどこも閉まっちゃって。やっと見つけたちょっと高そうなレストランに入って、あなたオートミールを注文してくれて。」懐かしそうに美代子さんが続ける。

「わたしの知らない高級な料理を知っている人なんだわって感動していたら、出てきたのは牛乳が入った御粥みたいで。それしかないからふたりで黙々と食べたわよね。」

「おれだって、なんかの肉料理だと思ったんだ。」

「あなたは昔から見栄っ張りなんだから。」

深いシワが刻まれた妻の手をぼうっと見ながら、若い頃から今までのふたりで歩いてきた道のりを思い、感慨にふける秀夫さんだった。

いろいろあったけど、なんとかここまでこれたなぁ。

ふと日が暮れかけた通りをガラス越しに見ると、散策の人々もすでに帰り足だと気がつく。さて、甘いものを食べたら家に帰ろうか。

ほどなくして夫婦が注文した甘味が運ばれてきた。
テーブルには「餅ぜんざい」が仲良くふたつ並んでいた。

あかりやで餅ぜんざいを食べるシルバーイラスト

夫婦が回ったルート

夫婦が回ったルートマップ

マップはこちら(PDF)

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〒350-0043 埼玉県川越市新富町1-9-2 (川越湯遊ランドさんのとなり)
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